環境リスクの基礎知識
環境リスクの基礎知識

ダイオキシン類についての基礎知識

ダイオキシン類とは

ダイオキシン類は、工業的に製造する物質ではなく、ものの焼却の過程などで自然に生成してしまう物質です。一般に、ポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(PCDD)とポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)、コプラナーPCBをまとめてダイオキシン類と呼びます。
ダイオキシン類は猛毒で、強い催奇形性・発癌(はつがん)性をもちます。
ダイオキシン類全体の毒性の強さは毒性等量(TEQ)で表します。

ダイオキシン類の基準値と規制

ダイオキシン類は、廃棄物処理法及びダイオキシン類特別措置法等にてその基準値が制定されています。

法規制等 対象 基準値
環境基準 大気 0.6pg-TEQ/m³以下(年平均値)
水質 1pg-TEQ/l以下 (年平均値)
底質 150pg-TEQ/g以下 (年平均値)
土壌 1,000pg-TEQ/g以下(年平均値)
廃棄物に係る基準値
(廃棄物処理法)
ばいじん、燃え殻、汚泥 3ng-TEQ/g
廃酸、廃アルカリ 100pg-TEQ/L
法規制等 施設の種類 焼却炉の
焼却能力
新設施設基準 既設施設基準
排ガスに係る排出基準値
(ダイオキシン類特別措置法)
廃棄物焼却炉 (焼却炉能力が合計50kg/時以上) 4t/時以上 0.1ng-TEQ/m³ 1ng-TEQ/m³
2t/時~4t/時 1ng-TEQ/m³ 5ng-TEQ/m³
2t/時未満 5ng-TEQ/m³ 10ng-TEQ/m³
ガス化改質方式の焼却施設 0.1ng-TEQ/m³  
固形燃料化施設 0.1ng-TEQ/m³  
製鋼用電気炉 0.5ng-TEQ/m³ 5ng-TEQ/m³
鉄鋼業焼結施設 0.1ng-TEQ/m³ 1ng-TEQ/m³
亜鉛回収施設 1ng-TEQ/m³ 10ng-TEQ/m³
アルミニウム合金製造施設 1ng-TEQ/m³ 5ng-TEQ/m³

※排水に係る排出基準値は特定施設において10pg-TEQ/Lと定められています。

焼却炉解体に伴うダイオキシン類対策

焼却炉の解体に伴い、ダイオキシン類の調査・対策が必要となります。(廃棄物焼却施設内作業におけるダイオキシン類ばく露防止対策要綱) 焼却炉を解体する際はダイオキシン類業務作業指揮者が必要です。また、作業を行う場合は事前に4時間の特別教育を受けていなければなりません

解体前調査

  • 作業場空気中のダイオキシン類測定(作業環境測定)と、焼却炉付着物等のダイオキシン類測定及び重金属類の調査を行います。
    調査結果により、解体に伴う保護具及び解体作業方法が決定します。
    ※火格子面積又は火床面積が0.5m²以上であるもの、焼却能力が50kg/h以上であるもの及び一次燃焼室の容積が0.8m³以上であるものが対象となりますが、適用対象より小規模の焼却施設において行われる作業についても、本対策要綱に準じばく露防止対策を講ずることが望ましいとされています。

《付着物測定(サンプリング)箇所》

  1. 焼却炉本体炉内焼却灰及び炉壁付着物
  2. 廃熱ボイラー 缶外付着物
  3. 煙突 煙突下部付着物
  4. 煙道煙道内付着物
  5. 除じん装置 装置内堆積物及び装置内壁面等付着物
  6. 排煙冷却設備 設備内付着物
  7. 排水処理設備 設備内付着物
  8. その他の設備 付着物
※サンプリング対象物におけるダイオキシン類含有量が同程度であることが客観的に明らかである場合は、必ずしも全ての対象についてサンプリングする必要はない。

解体申請

  • 火格子面積2m²、焼却能力200kg/h以上、「許可施設」に当たるものは、「労働基準監督署」への解体計画書の提出をした上で規則に基づいた方法で施工しなければなりません。
  • 床面積0.5m²、焼却能力50kg/h以上~火格子面積2m²、焼却能力200kg/h未満の場合、労働安全衛生規則に基づいた方法で施工しなければなりません。但し、「労働基準監督署」への解体計画書の提出の必要はありません。
    ※都道府県、各市区町村の条例によっては、火格子面積2m²、焼却能力200kg/h以下の場合であっても焼却施設の解体、撤去工事を行う場合の届出が必要になることがあります。

解体作業

  • 調査結果により、保護具及び解体作業工法が決定します。
  • 排気処理、排水処理など周辺環境への飛散防止対策を行います。
  • 作業場空気中のダイオキシン類測定(作業環境測定)を少なくとも1回以上、行います。

《調査結果による保護具の決定》

  • 第1管理区域:レベル1
  • 第2管理区域::レベル2
  • 第3管理区域:及び汚染状況が判明しないレベル3
  • 高濃度汚染物(3000pg-TEQ/g<d)を常時取り扱う: レベル4

《解体対象焼却施設の空気中のダイオキシン類濃度の測定結果》

  第1評価値<2.5pg-TEQ/m³ 第2評価値≦2.5pg-TEQ/m³≦第1評価値 第2評価値>2.5pg-TEQ/m³
B測定値<2.5pg-TEQ/m³ 第1管理区域 第2管理区域 第3管理区域
2.5pg-TEQ/m³≦B測定値≦3.75pg-TEQ/m³ 第2管理区域 第2管理区域 第3管理区域
B測定値>3.75pg-TEQ/m³ 第3管理区域 第3管理区域 第3管理区域

《汚染物のサンプリング調査結果d(pg-TEQ/g)》

上表の第1管理区域 上表の第2管理区域 上表の第3管理区域
d<3000 pg-TEQ/g s<2.5pg-TEQ/m³ 保護具選定に係る第1管理区域 保護具選定に係る第2管理区域 保護具選定に係る第3管理区域
3000≦d< 4500 pg-TEQ/g 2.5≦s< 3.75 pg-TEQ/m³ 保護具選定に係る第2管理区域 保護具選定に係る第2管理区域 保護具選定に係る第3管理区域
4500 pg-TEQ/g≦d 3.75pg-TEQ/m³≦s 保護具選定に係る第3管理区域 保護具選定に係る第3管理区域 保護具選定に係る第3管理区域
  • 汚染物のサンプリング調査は空気中のダイオキシン類濃度を測定後に実施
  • ①:汚染除去・解体作業中、デジタル粉じん計等により連続した粉じん濃度測定等を行わない計画の場合 d:汚染物のサンプリング調査結果(pg-TEQ/g)
  • ②:汚染除去・解体作業中、デジタル粉じん計等により連続した粉じん濃度測定等を行う計画の場合 S:粉じん濃度(g/m³)に汚染物のサンプリング調査結果(pg-TEQ/g)を乗じた値(pg-TEQ/m³)

《管理レベルにおける作業服》

解体作業後

  • 作業後は周辺環境中のダイオキシン類測定(一般大気・土壌等)を行います。